鈴がうたう日
発売元:Tactics
発売日:99年5月28日
記入日:99年6月29日


このページ及びネタバレのページには、Tactics のゲーム 「鈴がうたう日」 の画面を使用しています。
引用をされたい方は、Tactics のホームページ上の使用条件をお読みになった上で、その条件に従った使用をして下さい。

 このゲームには結構な曰くがあります。タクティクスはこのゲームを出す前に、「ONE」というタイトルのゲームを発売し、絶大な人気を得ながらも、スタッフ数名が抜けたがために、同時期に発売された他社のゲーム達の陰に隠れることになってしまったのです。(皮肉なことに、その内の一つはその抜けたスタッフがいる会社が作ったゲームだった) このあたりの話は、この手のゲームに詳しい人なら結構知っていることであり、当然私の耳にも入っていました。
メイン画面 個人的には、あの「ONE」のシナリオづくりが大好きだった私は、「スタッフが少々抜けた程度で、作風が変わるものか」と、同時期に買ったゲームの中でも、真っ先にこのゲームの封を開けたのですが…。
 ゲームの紹介に入りましょう。7月も終わろうかというある雨の日、ひょんな事から出会った天使のような少女「すず」と一緒に暮らし始める主人公・裕児。見た目はお子さまで友達感覚の新条七海、3年ぶりに町に帰ってきた元クラスメイト、月城蛍を交え、夏の恋物語を描く作品です。すず以外は全員知り合いという内容から考えても、劇的な展開とかは望めず、ただ何気ない日常をどれだけ魅せられるかが、このゲームのポイントだったと思うのですが、どうだったでしょうか。
 システムの方ですが、一日の初めに行きたいところを選択、その先で起こったイベントによってゲームの進行具合が決まるタイプで、似たような有名作品に「TO HEART」があります。このタイプのゲームは行動パターンが多いため、たまに完全にはまってしまうことがあり、その中でも特にこのゲームはわかりにくい作りになっていると思います。かなり前半にバッド確定のイベントがあったりして、どこで失敗したのかが判別しにくいのが実際のところ。いっそのこと、前半で失敗したなら中盤でゲームオーバーにでもしてくれた方が良かったんじゃないでしょうか。
フルグラフィック それと、結構ロードが多いゲームにもかかわらず、セーブ・ロードのメニューをWINDOWSのシステムに頼っているところもあまり好きではありませんね。マウスの動きが大きくなるところもそうですが、WINDOWSのメニューはデフォルト値ではセーブ・ロードの間隔が狭く、よく間違えて選択してしまいます。経験上、2・3回は失敗するだろうなと思っていたら、案の定でした。ロードしなくて攻略できるゲームではないので、そのあたりのシステム面の改善をして、物語に集中できる環境を作って欲しかったですね。
 少しフォロー。難易度に関してはかなりの私見が入っていて、一般人には普通以下に感じるかも知れません。あしからず…。
 次にグラフィックに行きましょう。キャラクターデザインは個人的には許容範囲内。それが好きで購入するといった類ではないものの、10分もすれば違和感がなくなり、終わる頃には好感も持てるぐらいでしょうか? 背景の方は…なんていったらいいのだろうか? 絵の具と筆で綺麗に書き込んだような感じとでもいっておきましょう。何が何でも綺麗というわけじゃないのですが、書き込んだ跡が見られて、非常に好ましかったですね。
 ただ、いくらクリア後のおまけで見られるとはいえ、グラフィックの一部を日付表示で隠してしまうのはどうかと思うのですが。
 サウンド面ですが、個人的に一番気にしていたところです。とりあえず聴いてみたところ、「ONE」と比べても大して遜色はありませんでした。この部分を聞かせたいという音がはっきりと聞こえ、気が付いたら頭の中に入っているという昔ながらのゲームミュージックに通じるものがあって、派手な曲こそないものの、何気なく聞いているのに良い曲が揃っていました。その中でもお気に入りなのは「うたたね」で、あまりメインテーマを気に入ることが少ない私にとっては、珍しい当たりでした。あとは、やっぱりエンディング曲の「しあわせになろうね」でしょうね。
 さて、ゲームそのものの評価に行きましょう。
ミニグラフィック 最初に一言いっておくと、1つ一つのシナリオだけ取れば、その練り混み方は同・他社ゲーと比較にならないほどにすごいです。上の方だけを見れば、ごく普通の評価といったところですが、本当はベタ褒めしたいのです。ネタバレにも繋がるので熱く語ることができないのですが…。
 前・中盤まではのほほんとした感じで、何気なく出会って、何気なく会話してという展開を繰り返します。ただ、その何気ない部分にも手を抜かないのがタクティクスと言ったところでしょうか、決してだらだらしていないところは称賛に値すると思います。そして、いったんエンディングに入ったら、これでもかといわんばかりの引っ張り方。涙なくして…といった内容じゃあないんだけど、一文字一文字読ませてしまう文章力、想像できない展開でものの見事に虜になってしまいました。少なくとも「ONE」が好きだという人で、このゲームが嫌いだという人はいないんじゃないかと思います。
 本当に残念なのは、やっぱり難易度でしょうか? 超個人的な見解ですが、シナリオとゲームの最高のバランスが10だとすると、このゲームはシナリオが8か9に対して、ゲームが3か4といったところでしょう。これだけ良いシナリオを練ったのだから、やっぱりストレスなしでそれを見せて欲しかったですね。ただ、後半あれだけ長いのに選択肢がなかったのは、その意思の表れだったのだと思います。これで、ゲームをプレイヤーがコントロールできる程度の難易度だったら完璧でしたね。

鈴がうたう日のネタバレコーナーへ

前のページへ