Ys2 ETERNAL
発売元:日本ファルコム
発売日:不明
記入日:2000年8月17日


このページ及びネタバレ表現が一部含まれております。ゲームの面白みを損なう恐れがあるので、未プレイの方はそのあたりを了承した上でお読みください。
 10年以上前のパソゲー事情に詳しい人で、このゲームのタイトルを知らない人はいないでしょう。88年4月、「イース」の続編として登場したこのゲームは、話が1から繋がっているということと、その完成度の高いゲームシステム、当時としてはずば抜けて高い物語性で爆発的人気を博し、1と共に数々の機種に移植されていきました。既にどれだけの機種に移植されたのかを把握するのが難しいほどで、その副産物も数知れず。小説、ビデオ、アレンジ音楽CDと、これまた数えるのが不可能なほど。

 ファミコンを筆頭とした家庭用ゲーム業界が発展した理由に、ドラクエのヒットが上げられると思うが、ならば
パソコンゲーム業界を発展させたのは、間違いなくこのイースといえよう。これほど長く語り継がれ、そしてこの度リメイクされ大ヒットしている理由は、キャラクターの個性を引き出すのが非常にうまく、それを物語の中に器用に混ぜることが出来たからじゃないだろうか? 今でこそギャルゲー業界のおかげ(?)で色々な人気キャラクターが出ているが、リリアなどの人気キャラクターを十数年前に広めた日本ファルコムには本当に頭が下がります。このタイトルがなければ、間違いなく今のゲーム事情は変わっていたでしょうね。

 ところで、このゲームをプレイするのは、「MSX2」「PCエンジンCD−ROM(1と2カップリング)」に次ぎ、
3回目となります。(1はファミコン、セガマーク3までやっている) もうネタは知れているはずなのに、何回もやってしまうこのゲームの魅力…いや、魔力にはすごいものを感じます。

 さて、長すぎる前置きはこの辺にしておいて、「イース2エターナル」のレビューに入りましょう。当時とスタッフは変わっており、
今のスタッフがイースの魅力をどれだけ引き出せているのかが評価の対象になるでしょう。

 やってみた感想を一言でまとめると、「こだわれるだけこだわって見ました」という開発者の台詞が、ソフトウェアのパッケージから聞こえてくるような感じでしたね。

 まず、ゲームをする前に度肝を抜かれるのは、パッケージそのもの。本のように開いた中にイラストがある。作るのが面倒くさそうなものを平気で作る。そして中身、一番驚くのは、
昔発売されたアニメビデオ4巻分を丸ごと放り込んだDVDメディア。これだけで、万単位の価値がある。なのに、MIDIデータ、デスクトップアクセサリ、オンラインMIDI作家延髄の楽譜集など。これ、初回特典なんだけど、それだけで充分金を取れそうな代物をおまけでつける太っ腹。もはや平伏するしかありませんね。

 あと、説明書は数十ページの上製本。ゲームの説明書でここまでするかな? 普通。

 突然話は変わりますが、今回のレビューは
都合完全ネタバレ無しで書くのが難しそうなので、ここからはネタバレありで行かせて貰います。(読んでも、ゲームの面白さは損なわれない程度ですけどね) よって、感想を前もって一言書いておきます。一言でいうと、「やったことある人も、ない人もやってください」です。今までリメイク版といわれるゲームは何回か触ったことがありますが、これぞリメイクといえるだけの完成度がありますよ。

 さて、ここで帰るかどうかの判断は個人に任せるとして、システム面に入るとしましょう。ゲームの肝心かなめとなるシステムですが、
とにかく細かい。元々細かいのが好きなメーカーですが、マウス・キーボード・ジョイスティックのインターフェースを完備するだけでなく、画面の明るさの設定、処理が重くなったときの表示方法(処理速度を遅くしても全て表示する or フレームをカットしてゲームスピードを落ちないようにする)、画面右下に現在時刻を表示する、モンスターを倒したときの血しぶきなどの表現を無しにする(お子様対策?)、意味不明のマスコットなどなど。他のゲームでは見られないような項目がズラリ。セーブ時点の画面そのものが保存されるのも、ポイントが高いといえよう。そして極めつけは、それまでのストーリー、登場人物、モンスターが一目瞭然の「冒険日誌」。元よりそんなに長いゲームではないが、RPGで物語を振り返れるというのは本当に素晴らしいことだと思う。ちょっとジョイスティック関係でバグがあったけど、修正パッチも出ているし、それはご愛嬌ということにしておこう。

 それよりも、このゲームはとにかく演出にこだわっている。いくらか上げさせて貰うと、「芝生を踏むとさくさくと音が鳴る(地価水路の水が引いたあとの水を撥ねる音も同様)」「ノルティアの氷壁で足跡が残る(しばらくすると消える)」「ランスの村北側の崖から小石が落ちる」「ランスの村の北側から地上のバギュバデッドが見える」「バーンドブレスの溶岩の表現」「レグ翁の井戸水をくみ上げる所の水が落ちる表現」。そして極めつけは、
「イース中枢の結界の前を通ると、アドルの位置によって結界の音が右から聞こえたり左から聞こえたりする」。これは、気付いたときにはさすがに驚きましたよ。考え付いても、実行するのはファルコムスタッフぐらいでしょうね。

 まあ、どれも「だからどうした」的なものばかりなんだけど、
それにここまで力を入れるということ自体がすごい。やはり、リメイクする限りは、ここまでやらなくちゃね。

 グラフィックは、まあファルコムの場合昔から細かい書き込みに定評があるのですが、背景の美しさは見事としか言いようがありませんね。特に遠くに見えるエステリア、ダーム戦の背景の美しさはゲームするのを忘れてしまいそうでしたよ。ただ、残念なのは、
ダイレクトXを使われているため、グラフィックの取り込みが完全に出来なかったこと。このあたりはメーカーの責任ではないのですが、綺麗なだけに、綺麗なものを壁紙にする癖のある私としては非常に残念です。

 で、
イースといえばやはりサウンドでしょう。私個人としては、ゲームミュージックというジャンルを確立させたのはイースだと思っているゆえ、このゲームの曲には深い思い入れがあります。

 もちろん、「イース2エターナル」の曲も当時の曲のアレンジということになります。しかし、イースの曲はあらゆるところでアレンジされているので、別段アレンジ自体が珍しい訳ではありません。ただ、アレンジ自体が私の好きなJDKバンドということで、実際に聞いてみたところ、原曲のイメージを壊さずうるさくない、ゲームにあったアレンジ具合になっていると思いました。これ以上派手にアレンジすると、BGMとしては疲れるだけの代物になったかもしれませんね。

 それよりも、「イース1」の未使用曲だったものを数曲使っていましたね。サルモンの神殿後半で突然その曲が入ったときは、思わず「お?」と声を上げてしまいました。そして、エンディングの一番最後に
「FEENA」で締めくくる。憎い演出ですよ。

 あと、おまけの中にゲームにも対応しているMIDIデータも入っていました。ファルコムはあまりMIDIを使うのはうまくないという印象があったのですが、今回はそこそこいけていたのではないでしょうか? ただ、やっぱりCD−DAの方がいいみたいですね。都合、MIDIの調子が悪いためあまり聞いてはいないので、いろいろ語るのは止めておきますが。

 ただ、残念なのは音楽そのものではなく、その音楽を鳴らせるシステム。なんで、
音楽が始まる瞬間、ゲームが一瞬止まるんでしょうか? 興ざめもいいところですね。(特に、ゲーム終盤ゴーバンが登場するところあたり。「そうは………いかねえぜ」だもん)

 ゲーム自体の評価と、素直な感想を述べさせて貰いましょう。

 ゲームの出来具合は、
とても10年以上前のゲームをリメイクしたとは思えないものになっています。まあ、それだけ元のゲームが完成していたとも取れますね。当時をやっている人はわかると思いますが、村のマップとかは変わってはいるものの、ダンジョンマップとかはほとんど変わっていないようです。あの複雑怪奇なサルモンの神殿のマップを作り出した人は、間違い無しに天才だと思います。

 そして、イースといえばボスキャラ。当時、ダレスやダームにわざと低レベルで挑戦して遊んだ記憶のある私としては、また熱い戦いを期待していたのですが、マウスにレベルをあわしていたのか、
ジョイパッド使用の私にはちょっと歯ごたえなかったですね。ノーマルではつまらなかったので、2周目はハードで挑戦したのですが、それで丁度って感じでした。さすがにレベル50でダームはどうしようもなかったですけど…。

 だれか、勝てる人います?

 えっと、2周目といえばこのゲーム、2回目のプレイ時に追加イベントがいくらか入るんですよね。なんでこんな煩わしいことをするのかと思えば、やってみて納得でした。確かにあの内容は、ネタを知らない人が1週目から見るにはどうかなって感じでしたね。ただ、
どうせ2回やらせるなら、もっと色々いじくって欲しかったな。マップ変えろとは言わんが。
 そしてストーリー。はっきりいって、ネタは知っています。PCエンジンで音声入りも聞いたこともありますが、それでも思わず読んでしまう、エンディングに感動してしまう。あのフィーナの涙が零れ落ちるシーン、
もう何も言うことはありません。最高です。

 おそらく、このゲームを作ったスタッフは、「イース」を作った日本ファルコムに憧れて入社した方がほとんどなのでしょう。
その思いをゲームにつめこんだって感じでした。


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