ゆきのかなた |
えっと、私はゲームを攻略する前に、あまり先入観を入れないよう、やりたいと思ったゲームの情報をなるべく切ってしまう癖があるのですが、今回はちょっと違います。実はこのゲーム、知人に薦められての、自分の予定外のプレイだったからです。 その知人曰く、「短いけど話はいい」とのこと。あまり長いゲームは自分に向いていないので、「ちょうどいいか」程度の気持ちで購入しました。「痕に似ている」という評価も、購入に拍車をかけたのでしょう。逆に、それ以外の知識は何も入れていませんでした。普段雑誌でストーリーや世界観を確認してから購入する私としては、異例のパターンです。 いつもと違う予備知識を持ってプレイした「ゆきのかなた」はどうだったでしょうか。 ゲーム内容の紹介と行きましょう。 15年より昔の記憶がない主人公・黒森嵩秋。久しぶりに自分を引き取ってくれた黒森家に帰ってきた嵩秋は、そこで不思議な力を持つ少女・高嶺燕と出会う。それをきっかけとして、嵩秋の回りには異能の力を持つ者が集い始めていた。 人でない力を持った者達が織り成す、ちょっぴりダークで、そして切ない物語です。最後に嵩秋が見るのは、絶望か? 幸せか? ゲームそのものに入ります。ゲームタイプは前述したとおり、「痕」などに代表される『攻略することによって選択肢が増える』タイプのものです。選択肢の多さ、エンディングの豊富さに焦点のあたるのは当然ですが、苦労して見た「真のエンディング」のインパクトが、特に重要視されるタイプだと思います。 そのシナリオを見せるシステムですが、他のゲームにはないものが一つ。それは「ルビ表示機能」です。平たく言えば、フリガナって奴ですね。ノベルタイプのゲームでは、難しい漢字を多用したくなるので、必然的に読みづらいものが出てきます。しかし、読めないからといってわざとそれを避けるために、噛み砕いた表現・読みやすい漢字ばかりを使っていては面白みを半減させる。だから、この機能の登場は必然なのかもしれませんね。 まあ、プレイヤーの年齢層を考えると大概の漢字は読めるとは思うのですが…。 その他の機能としてはあたりさわりのないシステムといったところでしょうか。読んだ事のないメッセージは飛ばせないので、高速スキップしながらプレイしても重要なメッセージを読み飛ばすことはない。このタイプのゲームでは必須とも言えるシステムはしっかり押さえているので、ゲームの基盤のために面白みが半減するということはなかったと思います。 ただ、メッセージ速度は自分で調整できるようにした方がよかったのではないだろうか? デフォルトの速度は遅すぎてかったるいし、高速は一瞬なのでゲームを無駄に早く終わらせてしまう恐れがある。結局私は遅いままでプレイしたのですが、表示されるのがじれったくて、ボタンを連打していました。 それと、プレイ中によく止まりましたね。正確に測っていないけど、多分6回ぐらい。まあ、うちのシステムも結構特殊だし、終了を選択すれば普通に終了したので、回帰も早く特に気にしていなかったのですが。 あと、フルスクリーンを使用すると、タスクの切り替えが効かなくなるのも個人的にはマイナスでしょうか。メモが取れないので…。 どれも、致命的なものではないのですが…。 …ちょっと話はずれますが、このゲームの特典はなんと「トレーディングカード」。意表をついています。しかも、その裏面が説明書になっていて、読みにくいことこの上ない。まあ、そのあたりはメーカーもわかっているようで、ちゃんとした説明をホームページ形式で画面上に表示できるようになっているのでよしとしましょう。なかなか面白い試みだと思います。 ちなみに、各セットに一枚だけ入っているスペシャルカード、私はヒースでした。 話を元に戻しましょう。グラフィックですが、背景に実写を取り込んでいますね。(これを書いたというのなら、たいした技量だ) 家の中や教会・学校など、どこで取ったんだろうと思わず興味を持ってしまいます。特に高嶺の屋敷などは、元を見てみたいな。 キャラクターデザインの方は、ちょっと幼い感じがしますがこれは個人の好みですね。私個人としては特にプレイに違和感のない程度といったところでしょうか。ただ、全画面グラフィックに、せっかく綺麗なのにちょっとHゲーを意識したがために、美しさを損なっているなと思えるものがあったのが残念ですね。 簡単に言うと、ちょっとHなので壁紙に使うには支障のあるものが多かったと…。 音楽はなかなかだと思います。思わず口ずさみたくなるような名曲はなかったのですが、主旋律がしっかりしているので、簡単に覚えることが出来ます。あえて気に入った曲を上げるなら、なんとなしに寂しげな「アスリエルのテーマ」と「遥かなる記憶」でしょうか。 それよりも高評価したいのが、ボーカル入りのOP曲「陽光を抱きしめて」とED曲「あなたが降る街」。「陽光を抱きしめて」は非常にリズムがよく、とても覚えやすい。ゲームを離れてもしばらくは頭にこびりついていました。 どこかで聞いたような感じがするのですが…。 それはともかく、「あなたが降る街」の方は使い方が非常によかった。実はエンディング以外にも一回聴く事ができるのですが、そのシーンがとってもよかったので…。曲自体もやかましくなく綺麗なつくりで、「陽光を抱きしめて」とは全然違うものの、こちらも非常に気に入っています。 OP、ED共に気に入るのは珍しいことですね。ボーカル担当の方が、自分にあってるのかもしれません。 ただ、音楽のシステム自体はちょっと難ありでしょうか? WAVとCD−DAをサポートしているのですが、WAVはフェードイン&アウトを使うことができるものの、タスクを切り替えると音が鳴らなくなる。一方CD−DAには、メッセージスキップ時にまったく読み込みがついて行けないという弱点が。 まあ、WAVの音質がCD−DAクオリティとまったく遜色がなかったのが幸いですね。メモ取っているときくらい音楽が鳴らなくても別に構わなかったので。 というか、普通タスクの切り替えまでゲーム作成時に考慮しないって。 …自分で自分を突っ込んでも面白くないので、総合評価に入りましょう。 ゲームをやった感想ですが、知人が言うほど短くはなかったと思います。これは、システムのところで書いた「メッセージの表示速度」が影響しているのかもしれません。多分、高速設定でプレイすれば、短く感じるんじゃないでしょうか。そう思ったので、あえて高速表示を使わなかったのですが、どうでしょう? あと、「選択肢が増える」タイプのゲームだということをほとんど意識しませんでしたね。これは、自分が攻略するキャラクターの順番が、ゲームを攻略する順番に適していた結果でした。まあ、元々選択肢が増える要素が少なかったのも影響しているのでしょう。 選択肢の量はそこそこでしょうか。少ない類かもしれませんが、私的には丁度といったところでしょう。ただ不満なのはエンディングの量。量自体は結構豊富だと思うのですが、パターン的に少ないと思います。ありきたりの終わり方ばっかりで…。 せっかくこういうシステムを取ったんだから、もっとひねった終わらせ方を増やした方が、ゲームをもっと面白く出来たと思います。 あと、せっかく練ったキャラクターと世界設定が消化不良を起こしているような気がしますね。ネタバレに繋がるのでここでは書きませんが、非常に勿体無い限りです。 ただ、真のエンディング自体はなかなかに綺麗で、それに関しては納得済みです。やって損したとは思っていませんね。音楽的にもお気にがあるしね。 ゲーム自体にもっとトッピングする技術を手に入れたら、今後良いゲームを作るんじゃないかという「可能性」を秘めていると思います。 |
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