kanon 発売元:KEY 発売日:99年6月4日 記入日:2000年7月23日 このページ及びネタバレページには一部、Key
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いまさらこのゲームを語るのは遅すぎるのも知れません。だけど、やっぱり書かせてもらいます。 一年前に発売されたこのゲーム、新ブランドにも関わらず、人気のスタッフ陣で発売前から話題をかっさらい、ゲームを出していない会社のHPのアクセスカウント数が、ソフト発売前になんと50万近くまで行くという偉業を成し遂げたKEYの処女作でした。 かくいう私も、初めに雑誌のKEYの広告(ゲームの宣伝ではなく、会社の宣伝だった)を見て、スタッフ陣を知らないまま、「この会社はいいゲームを作るぞ」と思ったものです。たった1ページの広告に、すごい魅力を感じさせる技を持った会社の作るゲーム。発売日に買ったにもかかわらず、丁度多忙になった時期と重なり、机の下に安置されたままなんとなしにプレイする機会を失っていました。 一応知らない人のために、ゲーム紹介をしましょう。 内容はよくある、選択肢によってストーリーが変わるタイプのアドベンチャー。システム的に真新しいものは無く、純粋に内容で勝負をかけています。 ストーリーをちょっと紹介。高校2年生の主人公「相沢 祐一」は、家庭の都合で遠く離れた親戚の家に居候することになる。7年ぶりに訪れたその雪国には、見かけこそ違えど中身はそのままの、いとこの「水瀬 名雪」の姿と、新しい出会いが。 夜の校舎で一振りの剣を携える少女「川澄 舞」。なぜか祐一を憎み、付き纏う記憶喪失娘「沢渡 真琴」。雪の積もる学校の中庭で一人佇む「美坂 栞」。そして、7年前に一緒に遊んだヒロイン「月宮 あゆ」の姿もそこにあった。 5人の少女と、個性豊かな脇役たちが作る、明るく楽しく、そして切なく悲しい雪の街の物語です。 システム面の評価をしましょう。操作はフルマウス仕様で、最近のアドベンチャーでは常識となりつつある「一度読んだメッセージはスキップ」を採用。何回のプレイも楽しむことができるようになっています。セーブ・ロードが接近しているので、間違えて選択する可能性もないでもないが、基本的に難易度が低くロード回数が多くないため、ほとんど気になることはありませんでした。 まあ、個人的には「マメに画面キャプチャーしたいから、スペースキーでウインドウがすぐに消せるように」とか、「フルスクリーンから Alt+Tab キーでデスクトップに戻らないから、メモが取りにくい」とか、「Ctrl キーでメッセージの高速表示ができるのに、そのことが説明書に書いていない」とか、「セーブデータを圧縮すると、3メガが20Kになる」とか、つっこむところはあるにはあるのだが、許容範囲でしょう。(?) 次にグラフィック。キャラデザは一度同じデザイナーのゲームをやっているだけに、まったく違和感なしにゲームに入ることができました。前よりとっつきやすい絵柄になったんじゃないかと思います。 背景の方もかなりのもの。特に川や噴水の「水」の表現の綺麗さが目立ちましたね。 で、個人的に一番気になっていたサウンドです。このゲームのメイン作曲担当の方は、この世界ではその名前だけでゲームを売れるほどの人気作曲家で、私もファンの一人です。個人的見解ですが、あまり音をごちゃごちゃさせずに、主旋律の音とその奏でで曲を作るので、曲自体が頭に入りやすいのが人気の秘密だと思っています。 このゲームも気に入った曲が数曲。一番覚えやすかったのはエンディング曲の「風の辿り着く場所」で、曲的にはオープニング曲の「Last regrets」の方が好きなのですが、覚えやすさでこっちの方がいいですね。あと、後半面を演出する「風を待った日」「霧海」「凍土高原」「冬の花火」の4曲。終盤切ないシーンに差し掛かったとき、主人公達が他愛ない話をしているのに、これらの曲が切なさを倍増させるのですよ。曲を作る側が、ゲームをよく理解していないとこれらの曲はできないでしょう。 あと、真琴のテーマ「the fox and the grapes」、栞のテーマ「笑顔の向こう側に」、後半部分の盛り上がりが素晴らしい「夢の跡」あたりがお気に入りですね。 エンディングの一番最後にさりげなく流れる「Little fragments」も、ゲームの余韻に浸るのにはもってこいの曲だと思います。 でも、この曲を聴いて「ソーサリアン」のエンディングを思い出したのは、私ぐらいでしょう。(なぜ?) 初回特典のアレンジCDもいい感じでした。こういうのって、製作者側の自信の現われみたいで、非常に好感がもてますね。 最後にゲームの総合評価をしましょう。 総合評価をする前に一言。もし、このゲームをやっていなくて、「私は明るく楽しく、そして切なく悲しい物語が好きだ」というのならば、これ以上読む必要はありません。ゲームを買ってとりあえずやってください。損はしませんから…。 とにかく、話を見せるのがうまい。攻略する少女達の個性を表現するのもうまいのですが、各シナリオに物語を盛り上げる脇役がいて、それを実に見事に使いこなしています。特に、名雪の母親で主人公の叔母にあたる水瀬秋子、舞の友達の倉田佐祐理あたりは、下手するとヒロイン役を喰ってしまいそうな魅力とインパクトを備えているほどで、おかげでよくありがちな前半面の弛みをまったく感じません。 そして、後半面の盛り上げ方と引っ張り具合。決してどんなシーンでも軽々しく扱わず、メッセージの一つ一つ、画面の演出効果など、全てを練りに練ったのがよく伝わってきました。話が佳境に入ってからのイベントシーンの数が尋常でなく、淡白に終わらないよう努力を積み重ねた結果が、高評価を受ける要因となったことは間違いありません。 ゲーム難度も、基本を押さえればスムースに進むので、物語に熱中できたのも成功の秘訣だったんだと思います。 なんかベタ褒めになってしまいましたが、これは仕方ないでしょう。感想を書く側にそこまで書かせるだけのものを、このゲームは持っていると言えるでしょう。 もうこれは、KEYの次回作に期待せざるを得ないですね。 実に見事でした。 |
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