青春の1ページ(笑)「ウィザードリィ」

 1999年3月22日午後6時、10年の時を経て、今、封印が解かれる…。
 …いきなり訳が分からない書き出しで始まりましたが、間違いなく「ウィザードリィ」のレビュー(?)のページです。
 このゲームには普通じゃない思い入れがあります。私の青春の1ページと言っても過言じゃないでしょう。
 …いや、ただ単に、当時中学生だった私が、高校受験を控え
「ゲーム買ったら駄目指令」を授かったために、やむなしにこれ(当時発売されたばかりのFC版)ばっかりやっていただけなんだけど…。
 とはいえ、1年近くをこのゲームのみで過ごしたのは事実です。
 …まじめにレビューしましょう。このページを見ている人は、多分ゲームの内容のほとんどを知っていると思いますが、一応念のために初めから。
 ゲームはよくある3DダンジョンタイプのRPG。最大6人のパーティーを組んで、剣と魔法を駆使し、ダンジョンの中をひたすら進む。一応ストーリーもあって、内容は「大君主トレボーが大事にしていた魔除けが、邪悪な魔法使いワードナーに盗まれた。トレボーの代わりに、地下10回にいるワードナーを倒し、魔除けを取り返す」というものだが。
 それだけ。
 その他余分なものは
一切ない。途中、イベントらしきものといえば、ブルーリボンというアイテムを手に入れるくらいなもの。あとは、地下10階の一番奥にいるワードナーめざし、敵を倒し、進む。
 しかし、ワードナーまでの道は苦難の連続。このゲームは戦闘が終わると即座にセーブされてしまうので、キャラクターが死んだらその時点でリセット。なぜなら、
絶対に生き返るとは限らないから。このゲームは、一度復活に失敗すると灰になってしまい、もう一回復活に失敗すると、ロストといって二度と復活できなくなる。せっかく育てたキャラクターがなくなると思うと、おちおち死んではいられない。しかもこのゲーム、結構死ぬ。楽勝かと思ったら、忍者にいきなり首をはねられてリセット。忍者がいなければ、今度はヴァンパイアにレベルを下げられる。やっぱりリセット。それらを乗り越えて、やっと敵を全滅させたと思ったら、出てきた宝箱にはテレポーターの罠が…。
 テレポーター。これほど凶悪な罠は他ではまず見られない。これに引っかかると、階数、座標問わずいきなり飛ばされてしまう。すごいのは、飛んだ先が壁の中だろうとも飛ばされしまうところだ。
 どうなるのか? もちろん、
全滅である。私のやっていたFC版はそれで済んだが、パソコン版の場合は、全員即ロスト…だ。もちろん、これに引っかかった場合はリセットボタンに手が掛かる。
 このゲーム、リセットなしで最後まで行けるのだろうか?
 …それはともかくとして、リセットを駆使(?)さえすれば、パーティーレベルが13もあるとワードナーまでたどり着くことができる。最強魔法「ティルトウエイト」さえ飛んでこなければ、勝つことも不可能ではない。そうして手に入れた魔除けを地上に持ち帰れば、持ち帰ったメンバー全員に称号が与えられ、ゲームが終了する。
 …訳ではない。
 
ウィザードリィの魅力は、ワードナーを倒し、称号を得るところにあらず。キャラクターをどこまで強くできるかが、このゲームの一番の楽しみだ。いったん称号を貰ったキャラクターの前に、2度とワードナーは姿を現さないが、それでもダンジョンを徘徊することはできる。経験値を貯めればレベルも上がるし、宝箱からアイテムも出てくる。
 これが楽しい。
 なぜかって? それは、
このゲームのアイテムが、敵を倒すことによってしか得られないからだ。キャラクターをとことん強くしたいという欲求は、RPGが好きな人間なら誰もが一度は持つはずだ。しかし、最強の攻撃力を持つ「村正」、歩く度に体力が回復する「聖なる鎧」、能力は同じ回復だが村正よりも出現頻度が低い「回復の指輪」。どれも、敵を倒してでしか得ることができないのだ。他のRPGのように、ダンジョンの奥に、最強装備が置かれていることも、特定の敵が特定のアイテムを持っているといったことも、このゲームにはない。キャラクターを強くするには、ひたすらダンジョンに潜って、手当たり次第に敵を倒すしかないのだ。
 レベルだって、上げようと思えばいくらでも上げられた。開ければ必ず敵が出てくる地下10階の扉で、経験値が高いモンスターが出てくるまで入る、逃げるを繰り返し、出てきたら倒す。特に経験値が高く、仲間を呼ぶグレーターデーモンが出てきたら、とりあえず数を減らし、減ったら増えるまで待ち、増えたらまた減らす。いわゆる
「グレーターデーモンの養殖」で粘り、一気にレベルを上げるのだ。まあ、パソコン版はあまり粘れなかったようだが、FC版はワードナーの魔除けを持っていれば毒、麻痺などの特殊攻撃を防げる上、毎ラウンドヒットポイントが5回復するので、グレーターデーモンのうっとうしい魔法さえ封じ込めば、パーティーではなく1キャラのみでの養殖が可能だった。このゲームの経験値は振り分け制なので、一人で敵を倒せば、6人パーティーを編成しているときの6倍の経験値が入ってくる。巷ではパーティーレベル(6人の平均レベル)をどこまで上げたかが話題に上っていたが、私は1人のレベルをどこまで上げれらるかに挑戦したのだ。
 2時間ぐらい粘って、94レベル一気に上げたこともあった。グレーターデーモンが出てくるまで「逃げる」コマンドを選択する癖がついていたので、養殖を2時間ほどして終わらせようと思ったときに、何を思ったのか
敵を全滅させずに、「逃げる」コマンドを選択して呆然としたこともあった。(泣) 満足した結果を得て終わろうとした途端、家中の電気が消えたこともあった。(なんて事はない、近所の電気工事で停電することを、私が知らなかっただけだ)
 そうして鍛え上げたキャラクターも、高校入学とともに私の前から消え去ることになる。なんてことはない、「ゲーム買ったら駄目指令」が解かれ、別のゲームに興味が移ったからだ。
 冒頭へと話が戻る。そう、あれから約10年の時が経った。正直いって、このカセットを引っぱり出すのは怖かったのだ。FCのバッテリーバックアップの寿命は5年程とのこと。その倍の時が経った今、データが残っている可能性はほとんどないはずだ。しかし、近所のファミコン屋さんの「結構残っているもんですよ」という言葉と、このレビュー(?)を書く使命感に押され、ついに封印を解くことになったのだ。
 結果は? 残っていたのか? 消えていたのか?
 驚いたことに、結果はどちらともいえないものだった。残っているには残っていたが、確かレベルを上げまくった侍の名は「グレイ」だった筈だ。しかし、そこには別のキャラクターの名前が…。ついでというと、メインパーティーのキャラクタ−が数名いない。
 つまり、データがおかしくなっていたのだ。
 しかし、
肝心の侍のデータは、名前こそ違うものの、完全な形で残っていた。それだけでも収穫だ。
 私はその画面をさっそくデジカメに納め、そしてFCの電源を落とした。もう二度と、このカセットのロムに電気信号が流れることはないだろう。
 私自身、今、妙にすっきりしている。
 ただし、それはこの件に関しての話。最近、「ウィザードリィ リルガミンサーガ」なるものがウインドウズ用で発売されているのだ。1〜3がセットになったというこの商品。パソコンならバックアップさえしっかりしていれば、何10年経ってもデータが消えるといったことはない。
 やる時間なんてどこにもないと解っていても、なんとなしにもう一度やってみたい自分が、今ここにいる…。

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