ゆきのかなたのネタバレコーナー

 表のレビューで、「設定の消化不良」と評したこのゲームですが、主にその辺をほじくった内容になると思います。
 今回は、各キャラ別シナリオの評価から、総評へと行かせて貰います。

ヒースシナリオ
 前半部分に印象の薄いキャラクターですね。魅力は後半部分にありってところでしょうか? 印象深いシーンは、やっぱり
ヒースが嵩秋を消しに来るところ。このシナリオ最大の見せ所でしょう。それと、ヒースを庇って嵩秋が傷ついたときの、妙に慌てたヒースの表情がとってもいいですね。ああいう表情をしないキャラクターだと思っていたので…。
 ヒースをメインとしたシナリオは、エンディングパターンが他と比べて一番多かったのでは? 知っているだけで8つもあるのだから。似たようなものも多かったのですが…。 特に「おいおい」とボヤきたくなったのは、
事故でヒースが嵩秋を刺してしまうエンディングかな? 「なんやそれ」と突っ込んだのは私だけではあるまい。
 お気に入りのシーンをもう一つ。裏切ったヒースが、能力者を次々と殺していくシーン。あのヒースの残像能力…こういうのが好きなんですわ。
 ところで、ヒースの真のエンディングをどう思いますか? 本人達が幸せそうだから良いのかな? 個人的には、これは本エンドの前に置いておくバッドエンドなんじゃないかと思うんだけどね。
 …最後に一言。このシナリオのボス的存在になっているルグランですが、ちゃんとデザインしてやれよな。死に方は小者らしくて良い感じでしたけど。(?)

未殊シナリオ
 妙に幼い感じのキャラクターだな。前半部分の態度や、他シナリオで見せる天藤星乃とのじゃれあいを見ていると我侭な感じかなって所だけど、嵩秋=お兄ちゃんとわかったあとの態度はただの可愛い妹的存在。その性で、キャラのインパクトを弱くしたのでは?
 このシナリオでは気になった点が残ったな。その中心になったのは、脇役の新城青嗣。なぜか未殊より印象に残ってしまいました。
燕の友達 どうも個人的には
「ゲームに出てくる神父=実は悪役」のイメージがあるのですが、このキャラクターはヒースシナリオでは嵩秋と敵対するものの本質的には善で、こういうのは好みのキャラクターだったりします。ただ、扱いはかわいそうなもの。ヒースシナリオでも彼女に撃退されているのですが、このシナリオでは単身乗り込んだイユンクスの部隊長ハンスになす術も無し。ハンスの部下を脅して、一応死んだことになっているが、はっきり言って新城よりも遥かに強い力を持つハンスが上司なのに、新城の脅し自体が効果があるのか疑問である。このシナリオも、嵩秋達は本当の幸せを手に入れたんだろうか。
 それと、新城と未殊の関係。未殊の姓は「霞」で「新城」ではない。台詞から考えるに本当の兄妹らしいのだが、その辺を突っ込んだ部分はない。なんでだろうね。
 …どうでもいいけど、奈々橋風見を捜索する部分、のんびりしすぎだよ。大体、奈々橋の家人はどうしているんだ? それと、このシナリオでは無視された燕はどうなったんだろうね? 

燕シナリオ
 この辺までは批評に偏っているな。ただ、ここからは
ルーンの本領発揮というべきか。メインには力が入っています。
 その分、他がおろそかに見えてしまうのが残念なのですが。
 それはさておき。ファーストプレイである程度見れる、このゲームのメインシナリオが燕シナリオです。聞いた話によると、他の2キャラのどちらかを解いていないと攻略できないとの事なのですが、あらかじめこういう攻略順に決めていたので、全然気付きませんでした。
 印象に残ったシーンといえば、燕が野犬を惨殺するシーン、
燕が自分の過去を語りだすシーンかな? 特に後者の方はなかなかにダークですね。あと、番外編として、燕が嵩秋を温室に案内したシーンも意外と好きですね。ボディーブローとは恐れ入りましたよ。怒った燕が力を振りかざしたら、洒落にしからないけど。
 しかしながら、やはり一番いいのはエンディングですね。あの、子どもとの
会話の間に一言一言メッセージを入れるやり方は見事でした。ただ、皆さんはこういう終わり方をどう思いますか? 確かに良いものは良いんだけど、ある意味バッドエンドみたいな終わり方なんで、やっぱり本当の二人の幸せを見てみたかったと思います。特に、このゲームは各キャラの本エンディングとバッドエンドが同じ曲を使っているので、余計にバッドエンドっぽく見えてしまうんでしょうね。
 各キャラの本エンドくらい、音楽変えてもよかったのでは?

アスリエルシナリオ
 攻略シナリオというより、「ゆきのかなた」の総まとめのために作ったシナリオのようですね。その証拠というべきか、このシナリオには一切の選択肢がない。もちろん、エンディングも一つだけ。
 でも、その一つ。まあ、アスリエルのエンディングというより、「ゆきのかなた」のエンディングと表した方が正しいと思えるこれは非常によかった。燕のエンディングもいいけど、
これは群を抜いているね。
 これが見たかったんですよ。これが。「アスリエルとずっと一緒にいるよ」と約束する嵩秋に対して、それが叶わない事と知っているアスリエル。悲しいシチュエーションです。
 ただ、文章を読ませる方法に不備があったのか、私が寝ぼけていたせいなのか、一回目のプレイではその話の深さが完全に入って来ませんでした。リオとの会話の間に、突然消えたはずのアスリエルの思考が入ってきたりして、もう一回読み返したくなったことがしばしば。どうやら、シナリオ担当の方がちょっとひねった表現・設定を好んで使うみたいなので、
それならば読み返しの機能をつけて欲しいですね。
力を振るうアスリエル エンディング以外で気にいった所といえば、
アスリエルが力を振るってハンスを倒すシーンのグラフィック。同シーンの「あなたを殺したりしない。誰にも殺させもしない。たとえ世界中があなたを消そうとしても…」という、アスリエルの台詞。このシーンのアスリエルはとにかく格好いいです。
 そうそう、エンディングといえば、
クライマックスにED曲「あなたが降る街」を持ってくるところが非常にいいですね。またあの曲がとってもマッチしているんだわ。この演出はとってもお気に入りです。
 エンディングの豊富さを売りにしなければならないタイプのゲームですが、このシナリオに関しては分岐はなくて正解だったと思います。
 ただ、他のシナリオに関しては…。
 総評に行きますか。

総 評
 そうですね。やっぱり他のシナリオの
エンディングパターンが少なかったかな?
 まあ、私の知っている限りで18個。決して少ないといえる数ではないのですが、質的に良いものが少ない。
バッドエンドとはいえ、何かを感じさせるものが欲しいんですよね。ほとんどが殺されオチでは、飽きられてしまいます。もっといろいろ作れたはずですよ。例えば、簡単なところで嵩秋がイユンクスに同調するとか、世界を滅ぼしてしまうとか…。ありがちだけど、そのありがちすらなかったですからね。
 あと、脇役の使いこなし。新城はともかくとして、
あとのキャラクターのインパクトは薄いですね。個性はもっているのだが、それを生かし切れてないように思えます。燕と同じネイチャーの奈々橋風見なんか、うまく使えばエンディングパターンを増やせたと思います。黒森冬成なんか、何のためにいるんだって感じだしね。
 ストーリー中にもよくわからずじまいの部分が残りました。未殊シナリオで述べた、新城と未殊の姓が違うところ。嵩秋のいた研究所とイユンクスの関係。燕シナリオのバッドコースで、嵩秋がハンスに勝てないことを知りながら、アスリエルが燕の居場所を教えたのも「何故」って感じ。そして、
カサフの力を使うと、消えてしまう理由
 結局のところ何が言いたいかというと、
「煮込みが足らなくて、素材を活かしきれていない」んですよね。メインディッシュは美味いんだけど、あとは…だと思います。
 燕のエンディングレベルのものを、
平気で「バッドエンド」として使えるぐらいの煮詰め方があれば、もっともっと高い評価が得られたと思いますよ。そう思えるぐらいに、いい部分はよかったですからね。

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