ボクシング観戦記

2000年4月21日 明石中央体育館


 このページをしょっちゅう回っている人はご存じでしょうが、みるきぃの趣味の中には「スポーツ観戦」というものがあります。とはいっても、テレビ観戦がほとんどで、わざわざ見に行くということはまずありません。理由は『遠出するのが面倒だから』。近場でやるのならいくらでも見に行くのだが、辺境の明石ではどんなスポーツでも滅多にやっていないんだけど…。
 今日は滅多にやっていない興行が目と鼻の先の「明石中央体育館」でやっていたのでさっそく行って来ました。ボクシング「東洋太平洋スーパー・ライト級タイトルマッチ 佐竹政一 vs スティーブン・マーチン」がそれです。佐竹は地元明石ボクシングジムの選手で、去年の12月にタイトルを奪取し、今回が初防衛戦になります。セミファイナルではあまり面識はないものの、家が近所で中学の時にとなりのクラスにいた戎岡彰の試合もあり、そっちも興味津々。滅多にこんな事はないので、大枚はたいてリングサイド席にて観戦することにしました。
 ボクシングの生観戦は初めてだったんだけど、とりあえずの感想は「思った以上に選手の動きが見える」ということ。テレビの映像技術も向上しているけど、所詮は秒間30分の1に区切られた世界だと言うことがよくわかった。まあ、見ている地点も全然違うと言えばそうなのだが、実際のスピード感や打撃音の迫力はテレビではあまり伝わっていないようですね。
 しかしながら、主催の明石ボクシングジム所属の選手はことごとく負けてしまっていささか拍子抜け。地元で緊張したわけではないだろうが、4回戦で出場した5人は全滅。情けない。
 4回戦は全部で7試合あったのだが、その中でも特に気になったのは2試合目に出場した白鷺の中村公ニ選手。色白で非常に小柄のファイタータイプで、冷静に相手を見る対戦相手の三原に突っ込んでいっては再三パンチを貰うもひるまず、2ラウンドに右ストレート(?)でダウンを奪う。その後もパンチを貰い続けながら突進を続け、4ランド終了間際についに相手をとらえてのKO勝ち。常に前に出て強打を振るい続けた彼の戦闘スタイルは非常に好感が持てた。デビュー戦だったようだが、頑張ってタイトルを取って欲しいものだ。
 他にもボクシングファンには延髄の要素がいっぱい。3試合目を前にして、あの辰吉丈一郎が北側のリングサイド席に姿を現す。どうやら、4回戦に出場する大阪帝拳の後輩を見に来たらしい。セミファイナル前にはリングアナウンサーに紹介され注目の的。なぜかメインイベントを見ずに帰ったが、試合そっちのけでその姿を追った観客がたくさんいた。
 それと、セミファイナル前に3月の月間MVPに輝いた現日本バンダム級チャンピオンの仲宣明選手の表彰があった。仲選手はデビュー戦こそ判定勝ちだが、それ以降驚異の10連続KO勝ちでタイトルを奪取した日本のホープ。将来の世界チャンピオン候補と表現してもおかしくない器で、ボクシングファンとしてはその姿を一目見た価値は大きかった。
 さて、セミファイナル。お目当ての戎岡彰の試合です。戎岡は30戦近いキャリアを持ち、19勝と戦績は申し分ないがノーランカー。パンチ力のなさとマッチメークの悪さ(?)で損をしているボクサーです。階級が一つ下とはいえ、フィリピンチャンピオンであるリッキー・ガヤモに勝って、もう一度株を上げたいところなんですが。いかんせん、このガヤモが強すぎた。ガヤモは体型から見てファイタータイプかと思ったら、意外とボクシングもこなしていた。しかし、その破壊力は見た目の通りで、戎岡とは打撃の炸裂音が根本的に違う。戎岡の身体がそのパンチをブロックする度に左右にはじける。まともに貰うのは何とか避けていたが、攻撃が牽制のジャブだけでは心許ない。中盤から左にかぶせてのカウンターを狙いだしたがガヤモも簡単には喰らわず、7回にはついにとらえられ両膝をつく。結局判定になったが、私には何とか生き延びたというようにしか見えなかった。結果は地元優位も何もない判定負け。まあ、相手の肩書きから考えれば、よく頑張ったといったところでしょうか。
 メインイベントは冒頭にも書いたとおり東洋チャンプの佐竹政一の登場。佐竹は関西のスピードスターと表されるようにスピードでかき回す、中量級には珍しいタイプのボクサー。パンチ力はないと自分でも言っているぐらいで、KOは難しいがその動きで客を魅了することを期待します。
大昔に、テレビでダウンした相手を殴っているのを見たことはあるのですか…。(?)
 対するスティーブン・マーチンはスキンヘッドのいかつい風貌。現オーストラリアチャンピオンで、見た目にパワーがありそう。スピードvsパワーの対決か?
 試合開始前、マーチンが呼び出され入場テーマが鳴るものの、青コーナー奥になかなかその姿を現さない。ちょうど辰吉が帰ろうとしたところで、その姿を追いかけようと一般の入口に詰め寄った観客を押しのけるようにしてマーチンが入場してくる。一般入り口から入ってきた選手はマーチンだけ。一体どこに行っていたのだろうか?
 試合開始。佐竹が右に左に動き回ると思いきや、予想外のマーチンのスピードにビックリ。回り込もうとする佐竹を止める左ボディーは威力充分で、あまり足を使わない佐竹に対しどっちがスピードスターかわからない展開。しかし、それは素人目だったようで、2回にはさっそく佐竹がマーチンをとらえる。効いたと思ったら目の覚めるような速攻でマーチンが膝をつく。パンチで効いて倒れたというより、パンチに振り回されて倒れたといった感じだったが、レフェリーはダウンを取る。しかしマーチンもただでは終わらない。その後も奮起して頭から突っ込んでは強打の連打を繰り出す。だが、中盤からそのワンパターンの攻撃になれてきたのか、佐竹が連打の打ち終わりにパンチを合わせてマーチンが動きを止めるという展開が目だってくる。
 そして10回。同じ展開で動きを止めたマーチンに、佐竹がラッシュで詰めようとする。しかしマーチンも応戦。この撃ち合いに負けたのは佐竹の方で、打ち疲れたのか、なぜかふらふらしている。逆転のチャンスと踏んだのか、今度はマーチンが猛然と突っ込み佐竹をロープ際へと詰めるが、右を空振りしたところに素早くマーチンの右手に回り込んだ佐竹の左ストレートがもろに命中。マーチンは空振りした勢いそのままに、豪快に一回転してマットに仰向けになった。マーチンは瞬間起きあがろうとしたが、慌てて駆け寄ったレフェリーはマーチンの動きを阻止、カウントもとらず両手を交差させた。
最後はチャンピオンの豪快KO勝ちということで、会場は大いに盛り上がった。明石の選手が全滅状態の中で、佐竹の勝利は興行成功という意味では大きな価値があったんじゃないかと思う。
 個人的には、3時間たっぷりスリルある戦いを見せて貰って満足と言ったところか。佐竹の次戦は高砂ということで、防衛を続けるか世界タイトルに挑戦するかしないとまた明石での興行はなさそうです。遠出するのは面倒なので、佐竹には頑張って欲しいものですね。


2002年5月15日追記
 辰吉は後輩の試合を見に来たのではなく、弟分である戎岡の試合を見に来ていたようですね。当時は二人の関係を知らなかったので不思議で仕方がなかったのですが、それを知って納得しました。どうりで、試合が終わったとたん帰るはずです。(^^;;;

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